【怪談】リリース直前の深夜オフィス、自販機の前に背を向けて立っていた「同僚の歪んだ横顔」

2026年9月13日日曜日

00 PC・IT関連の怪談

t f B! P L

 深夜の静まり返ったオフィスビルで、Yさんはリリース直前のデバッグ作業に追われていた。数日間に及ぶ徹夜の連続で疲労はピークに達し、頭痛と眼精疲労に耐えながら、自席で黙々とコードの修正を続けていた。


限界を迎えた脳を覚醒させようと、Yさんは席を立ち、明かりの落ちた暗いフロアを抜けて給湯室手前のリフレッシュルームへと向かった。

通路の先にある自動販売機の明かりだけが、白く冷たい光を投げかけている。その自販機の正面に、背を向けてじっと突っ立っている同僚の姿があった。同じチームのプログラマーだったはずだ。


「こんな時間にお疲れ様です」



疲れた声で声をかけたが返事はない。同僚はボタンを押すでもなく、ただ直立したまま微動だにしなかった。

機嫌が悪いのか、あるいは同じく徹夜で意識が飛んでいるのか。不審に思いながら近づいたYさんは、買おうとしていた冷たい缶コーヒーのボタンに手を伸ばそうと、その同僚の横を通り過ぎようとした。


ふと視界の端に、自販機のボタンの隙間に挟まった、見慣れない不自然な何かが映った。だが、それに目を向ける間もなく、隣に立つ同僚の気配に全身の毛穴が逆立った。

ハッとして、その人物の横顔を覗き込んだ。

見知っていた同僚の服を着ている。しかし、瞳の位置がわずかに下がりすぎている。口の裂け目は本来の比率より不自然に横へ広く、顔のパーツの配置が明らかに歪んでいた。人間のものではないバランスに組み替えられた顔が、こちらを見ることもなく、ただ自販機のパネルを見つめている。

背筋が凍りつき、喉の奥から声にならない悲鳴が漏れかけた。


その瞬間、自販機の蛍光灯が「ジジジ…」と耳障りなノイズを立てて激しく明滅し、フロア全体が暗闇に包まれた。

パニックになったYさんは振り返ることも忘れ、自分の席めがけて暗がりの中を無我夢中で走り抜け、デスクにしがみつくようにして朝を迎えた。


翌朝、フロアに他のメンバーが出社してきた頃には、同僚も何食わぬ顔で自分の席に座り、普通にキーボードを叩いていた。


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