【怪談】深夜のリモートワーク中、音声通話の向こう側から聞こえた「ぼそぼそとした話し声」

2026年9月19日土曜日

00 PC・IT・映像関連の怪談

t f B! P L

 自宅でのリモートワークが日常になった頃のことだ。プロジェクトの追い込みで、深夜にチームのメンバー数人と通話ツールを繋ぎ、それぞれの自宅から画面を共有しながらコードレビューを行っていた。

画面の向こうには数人のアイコンが並んでいる。深夜の静寂の中、キーボードを叩く音や、資料をめくるペーパーノイズだけが、それぞれのヘッドホンを通してかすかに聞こえていた。


作業を始めてから二時間ほどが過ぎた頃だった。


耳元で作業音に混じり、ごく小さな「ぼそぼそ」とした話し声が聞こえた。最初は、誰かがYouTubeの動画でも流しっぱなしにしているか、あるいは独り言だろうと思い、Tさんは特に気に留めずコードに集中した。

しかし、その声は徐々に大きくなり、聞き取りやすいトーンに変わっていく。



「なぁ、うるさいぞ」


メンバーの一人であるSさんが、不機嫌そうな声を漏らした。

「さっきから独り言がずっと聞こえてるんだけど。誰かマイクミュートにするの忘れてないか?」


Tさんは手を止めた。自分のマイクの状態を確認するが、当然ミュートになっている。他のメンバーたちも「こっちは無言だよ」「音楽もかけてない」と、それぞれ首をかしげた。

誰も喋っていない。それなのにSさんのヘッドホン、そして全員の通話音声には、確かに別の声が混ざり込んでいた。

奇妙な空気が流れる中、全員が作業の手を止め、リモートワークツール越しに互いの顔を見合わせたその時。画面に映し出された、メンバーの一人であるFさんのWebカメラの映像に、妙なものが映り込んだ。

Fさんの背後にある部屋の暗がりで、人の影のようなものがゆらりと動いたのだ。


「待って、Fさん。後ろに何かいるぞ!」


別のメンバーが慌てて声を張り上げた。

Fさんは驚いたように「え!?」と呟きながら、急いで自分の背後に振り返った。


「誰もいないぞ?…気のせいじゃないか? 暗くて見間違えたんだよ」


Fさんは苦笑いしながらそう言ったが、その顔色は青ざめ額に脂汗がにじんでいた。通話の向こう側で聞こえていた、あの不気味な話し声は、Fさんが振り返った瞬間からピタリと止まっていた。


「…今日はもう終わりにしよう。みんな疲れてるんだよ」


リーダーの一言で、その日のリモートワークは早々に切り上げられることになった。通話が強制的に切断され、自分の部屋の静けさに戻った時、Tさんは酷い疲労感に襲われ、そのままPCを閉じて床についた。


翌日以降、あの日の深夜に起きたことについて、チーム内で話題に上ることはなかった。


ただ、その夜を境に、Fさんは原因不明の激しい体調不良を訴え、そのまま会社を長期の休みで寝込んでしまうことになった。今でもリモートワークで夜遅くにヘッドホンをつけると、あの時聞こえた「ぼそぼそとした話し声」の幻聴が、耳の奥から離れないことがあるという。


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